ここに一人の男がいた。男は小説家だった。
小説というのは、それが事実ではなく、フィクションだからこそ、僕は何の躊躇いもなく、筆を進めるのだ。
その中に描かれている僕の心をひた隠しに隠して、物語にするのだ。
そう、これは僕が書く小説の物語。
その中には、うそとほんとうが綯い交ぜになっている。
人は小説を読みフィクションの世界に浸る。
だけれど、それは逆に現実を思い起させ、その中に自分を見たような気になる。
だけれど、それは作者に向けた嘲笑。
この物語は、僕が自分の為に書きたかった小説。
誰の為でもなく、自分の心の垢を落とし、綺麗な身体になっていくまでの物語。
不純なものだらけの世の中だからこそ、純粋なものは輝きを増す。
しかし、それはそれそのものが輝いているのではない。
周りから光を当てられれば、人は誰でも輝ける。
この物語のすべては、僕の汚れた心を浄化するために書かれた物語り。
不純物を取り除く作業。
そこには自己愛しか無い。
そして終幕には愛だけが残る。

