『パラレル・タイム』(逢坂 純・著)は、統合失調症を長年抱える当事者が綴った、断片的で詩的な短編集のような作品です。
日常の断片、深夜の孤独、過去の恋愛の回想、回復への小さな一歩——さまざまなエピソードが「並行する時間」のように並び、精神疾患を抱えながら生きる人間の内面を静かに描き出しています。
物語は「負ける気がしない」という強い意志から始まります。
負けず嫌いな主人公は、カーストや他人の目を気にせず、自分だけの居場所を守り、幸福を自分で引き寄せると宣言します。
24時間営業のゲームセンター「ハート・ビート」を舞台にした「24h」では、多様な人々が集まる場所の温かさが描かれます。
不良のたまり場から、成績不振のサラリーマン、深夜の常連、外国人まで——誰もが自分の時間を過ごす居場所として機能する様子は、精神疾患を抱える人にとっての「安全な空間」の大切さを教えてくれます。
断片的だからこそ、症状で集中しにくいときも読みやすく、読むたびに少しずつ心が軽くなる感覚があります。
精神疾患に馴染みのない方でも、「人間の心の奥底って、こんなに複雑で繊細なんだ」と実感できる一冊です。
『パラレル・タイム』は「並行する時間」を生きる人々の、静かな叫びと小さな希望を届けてくれます。
ぜひ、手に取って、その世界にそっと触れてみてください。
500円(2026年01月23日 14:55時点 詳しくはこちら)


