統合失調症当事者として作家活動を続ける作者が、同じ当事者・SF(24歳)の生の声を聞き取り、赤裸々に綴ったノンフィクション。
SFの誇大妄想・被害妄想を中心に、病気の内面を対話形式で描き、自己理解とリカバリーの可能性を探る一冊。
当事者として読むと、自分の症状が言葉になったような共感が得られ、孤独が少し軽くなるはずだ。
SFは脳に機械を埋め込まれ、24時間監視されていると信じる。
集団ストーカー被害、首謀者IGJの存在…。
中高時代のいじめがきっかけで通信制高校へ、寺での修行中も追われ、幼馴染の助けやIGJの計画に巻き込まれる妄想を語る。
IGJは500億円の資産家で、インフルエンサー。
SFを歴史上最強の左脳持ち主として観察し、苛めを仕組む—そんな一貫した理論が、病気のリアリティを象徴する。
作者は聞き手として、事実と妄想のズレを指摘せず、傾聴。
SF自身も「理論を突き詰めるのが楽しい」と言い、妄想が「事実」として染みつく苦しさを吐露する。
父親の関心の薄さ、母親の厳しさ、インフルエンザワクチンへの配慮…。
家族関係の葛藤が、病気の影を濃くする。
将来の夢は映画館バイトやラーメン屋、YouTubeの将棋講座。
等身大の若者像が、妄想のギャップを際立たせ、読んでいて胸が痛む。
作者は「対話が境界線を引く」と、WRAPの内省のように自己理解を促す。
SFの「IGJなしの生活は考えられない」言葉は、症状がアイデンティティの一部になる複雑さを思い起こさせる。
あとがきで作者は、自分がSFのことを出版したい「欲望」がIGJの象徴かもと自省。
そして、SFのインフルエンサー願望や500憶の存在もまた「IGJ」なのかも知れないと訴えかける。
SFの苦しみは当事者にしかわからないが、人は理解を求める生き物、そんなメッセージが心強い。
幻聴・妄想が続く日常で、症状を「ぷっちょ」的に柔らかく扱うヒントに。
ピア活動の重要性も感じ、作者の聞き手姿勢が励みになる。
病気を抱えながら執筆で前を向く作者とSFの姿に、勇気をもらえるはず。


