今作『ぷっちょ語録 僕の頭の中だけの「事実」』(逢坂 純・著、2023年独立出版)は、統合失調症という脳の病気を20年以上抱え続けている当事者の著者自身が、自分の頭の中にだけ響く幻聴「ぷっちょ」の声を13のエピソードで綴った、非常に率直で生々しいエッセイです。
統合失調症は100人に1人が発症する病気で、幻聴・妄想・思考伝播などの陽性症状が特徴です。
著者の場合、20年以上経ってもそれらが消えず、「脳の造りがそういう風にできあがっている」とまで思うほど続いています。
幻聴の名前「ぷっちょ」は、優しいお姉さんが少しでも明るく感じてほしいと付けてくれた呼び名。
そのぷっちょが、日常のあらゆる場面で突然割り込んでくるのです。
全てが「頭の中だけの事実」であり、現実の誰かの声ではないと著者はわかっているのに、どうしても現実のように受け止めてしまう。
その葛藤、被害妄想、思考伝播(自分の考えが他人から入ってくる感覚)、加害妄想まで、容赦なく書き出されています。
統合失調症というと「怖い」「理解しにくい」イメージがあるかもしれません。
でもこの本は、症状を隠さず、むしろそのまま晒すことで「こんな風に頭の中で毎日闘っている人がいるんだ」と気づかせてくれます。
家族(特に姉)の的確で愛情たっぷりのツッコミも何度も登場し、読んでいると胸が温かくなる瞬間もあります。
完璧なハッピーエンドでも、劇的な回復物語でもありません。
ただ今も症状と向き合いながら、作家活動とピアサポーターとして活動を続けている一人の人間の、ありのままの記録です。
この本を読むと、精神疾患への理解が少し深まるだけでなく、「自分も完璧じゃないし、頭の中で変な声がすることもある」という共感や、「それでも生きていこうとする姿に勇気をもらえる」という感想を抱く人が少なくありません。
この本は「知らなかった世界を、そっと覗かせてくれる」一冊です。
精神疾患に興味がある方、当事者の家族・友人、または単純に「人間の頭の中って不思議だな」と思う方へ、心からおすすめします。
ぷっちょ語録 : 僕の頭の中だけの「事実」 統合失調症当事者本amzn.to


