逢坂 純著『アンカーにバトンは渡された 続・リカバリー』(2023年8月11日に独立出版(KDP))
この作品はピアサポーター嬉野鉄平がピアサポーターとして当事者相談員になって当事者をサポートするというフィクション小説です。
主人公の嬉野鉄平(23歳)は、統合失調症の当事者として精神保健相談事業所「ハーモニカ」でピアサポーター(当事者相談員)として働き始めます。彼の担当利用者である戸田光代さん(統合失調症を抱える母親)とその娘・遥佳さん(ヤングケアラーとして母親の世話をしながら定時制高校に通う少女)に出会い、支援を進める中で遥佳に惹かれていきます。
物語は、嬉野が夢(中学校のリレーでアンカーとしてバトンを落とし、周回遅れで苦しむ夢)から始まり、福祉の現場での葛藤、恋心、家族の絆、リカバリー(回復)の意味をめぐる人間ドラマとして展開します。
マニュアルの必要性 vs 人間らしい支援、ピアサポーターとしての責任と限界、ヤングケアラーの問題が問題提起されます。
また、嬉野の当事者としての視点、統合失調症の幻覚・妄想の記憶、急性期の苦しみ、家族や周囲との関係も描いています。
先輩相談員・睦や所長・鈴木との関わりを通じて、「自分にしか渡せないバトン」を受け取り、渡していく過程がピアサポーターの社会的価値を見出します。
この物語には、温かくも切ない日常シーンが丁寧に描かれています。
最終的に、嬉野は「支援者として、わき役として」自分らしい責任の果たし方を見つけていきます。
著者は統合失調症を抱えて25年以上の経験を持ち、愛知県精神障害者ピアサポーターとしても登録し活動されています。幻聴、妄想、急性期の記憶、社会的スティグマ、福祉現場の内側などが、ステレオタイプではなく「生の声」として描かれています。
リカバリーとは、単なる症状の消失ではなく、意味のある人生を再構築することを指し、ヤングケアラー、家族の相互依存、福祉職の「人間対人間」の難しさと尊さ、「バトン」をつなぐ世代・人々のつながりとリカバリーの本質を描きます。
作品は重いテーマを扱いつつ、ユーモアや温かさ、青春の甘酸っぱさも散りばめられ、読後感は希望的です。
フィクションですが、著者の実体験が色濃く反映された「障害文学」らしい一作です。
AmazonでKindle版やペーパーバックが購入可能です。短めで読みやすいボリュームながら、テーマの深さがあり、「バトンは渡された」というタイトル通り、読んだ後に胸に何かが残る作品です。
アンカーにバトンは渡された: 続・リカバリー リカバリ― amzn.to
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