統合失調症と、まもなく24年以上向き合い続ける一人の当事者が、
「今も続いている」病気のリアルを、飾らずに綴った手記です。
25歳で診断を受け、まもなく25年経つ今でも、
頭の中で「土田セーラーさん」という幻聴が嘲笑い、非難し続けます。
「ドだせぇらー」(超ダサいよ)と三河弁で馬鹿にされたり、
「あいつに任せるんじゃなかった」「失敗したー」と落胆の言葉を浴びせられたり。
作者はそれを「ネガッちょ」と呼び、姉が付けてくれた「ポジッちょ」(ポジティブなぷっちょ)と区別しながら、
今日もその声に振り回されつつ、生きています。
「良くなったはずなのに、まだこんなに苦しい」
「普通の日常がわからない」
そんな当事者のリアルな葛藤を、
家族の支え、実家のぬるま湯環境、B型作業所でのライティング仕事、
グループホームへの漠然とした不安、遅れてきた青春の物語などとともに描き出します。
本書には、統合失調症の「感じ方」をすくい上げたような短編小説が5編収録。
シェルターに閉じこもる少年、させられ体験の恐怖……。
左脳が覚醒して世界を支配しようとする狂気……。
どれもフィクションでありながら、病気の内側からしか書けない生々しさがあります。
著者は言います。
「統合失調症になって小説家になったら、統合失調症が良くなった」
頭を程よく使い、認知機能を回復させるために書き続けている、と。
この本は、精神疾患を「克服した感動ストーリー」でも「暗い絶望譚」でもありません。
「今も土田セーラーさんがいる日常」を、
時にユーモアを交え、時に絶望をそのままに、
静かに、でも正直に語りかける一冊です。
統合失調症を知らない方へ。
この病気が「昔の話」ではなく、
今この瞬間も多くの人が抱え続けている「現在進行形の苦しみ」であることを、
どうか知ってほしいと思います。
逢坂 純著『土田セーラーの猛追 今、出版すべき統合失調症の当事者本』


