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逢坂 純著障害文学小説『カタルシス』誰もが壊れている、それでも光へ。

この作品は、統合失調症当事者である著者が描いた、深い喪失感・孤独・歪んだ愛情・再生をテーマにした長編小説です。

家族の崩壊、経済的破綻、裏切り、性、死、そして最後に訪れる微かな希望が、極めて生々しく、容赦なく描かれています。

物語を通して「愛とは何か」「家族とは何か」「自分を保つことの難しさ」を著者は突きつけます。

特に、みなみの思春期の衝動、祥子の抑圧された感情、浩之の絶望と自責、香の依存的な「愛」が交錯する描写は、読む者の胸を強く締め付けます。

この作品の最大の特徴は、登場人物全員がどこか「壊れている」点です。

誰もが必死に「何か」にしがみつこうとし、でもその「何か」はたいてい歪んでいて、結局さらに傷つけ合う――そんな人間の脆さと醜さ、そしてそれでも最後にわずかな光を見出そうとする姿が、容赦なく描かれています。

統合失調症当事者として執筆されたこの小説は、「感情の行き場を失ったとき、人はどうなるのか」という問いを、非常に直接的に突きつけます。

幻聴や妄想といった典型的な症状描写は控えめですが、心の深いところで何かがずっと「ずれている」感覚、現実と感情の乖離、どうしようもない孤独感は、病気の当事者でなくとも共感できる部分が多く、むしろ「健常者」側が抱える感情の行き詰まりを映し出す鏡のようです。

タイトル『カタルシス』は、ギリシャ悲劇以来の「感情の浄化」を意味しますが、本作では浄化されるのは読者側なのかもしれません。

読了後、胸の奥に重いものが残り、同時に「生きていることの重さ」を改めて実感する――そんな不思議な読後感があります。

統合失調症の当事者文学として読むなら、「病気のせいだけではない、人間誰しもが抱える闇」を描いている点が特に印象的です。


病気の当事者だからこそ書けた、生々しくて、痛くて、でもどこか救いのある物語。

心が強いとき、または「自分の中のどうしようもない感情」を誰かに見せたい・見られたいと思ったときに、ぜひ手に取ってみてください。


一度読み始めたら止まらなくなる、そんな中毒性のある作品です。

カタルシス | 逢坂 純 | 小説・サブカルチャー | Kindleストア | Amazon

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