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逢坂 純著闘うエッセイ『僕の頭の中のぷっちょPlus 恋愛と家族+幻聴と妄想と』ぷっちょと恋、完璧でなくていい。

『僕の頭の中のぷっちょplus』は、統合失調症の当事者である著者が自身の日常、恋愛、家族との関係、そして「ぷっちょ」と名付けた幻聴や妄想を赤裸々に綴ったエッセイです。
 
「ぷっちょ」という呼び名は、著者の姉が「幻聴」という重い言葉を少しでも軽やかにするために付けた愛称です。
 
この一言に、家族がどれだけ当事者を理解し、支えようとしてきたかが表れています。
 
著者は20年以上統合失調症と向き合いながら、作業所通い、個人出版作家としての活動、そして一人の女性(橋田さん)との出会いを通じて、恋愛という「普通」に憧れ、傷つき、葛藤します。
 
特に印象的なのは、橋田さんへの何度も繰り返される「告白」とそのたびに生じるすれ違いです。
 
著者は純粋に好きだという気持ちを伝えようとするものの、相手にとってはセクハラと受け取られたり、ただの「リア友(本当の友達)」止まりだったり。
 
そこには「障がいがあるから恋愛は無理」という自己否定と、「それでも人を好きになりたい」という切実な願いが交錯しています。
 
一方で、家族の描写も非常にリアルです。
 
最初は理解が乏しかった父親も、姉の主導で家族勉強会を開き、今では「ぷっちょだから」と軽く受け流せるようになる。
 
母親は時に厳しく、時に過保護に接しながらも、息子を見捨てません。
 
この「過保護」と「理解」の狭間で揺れる著者の心情は、多くの読者が「親子関係ってこういうものか」と共感する部分でしょう。
 
本書は決して「感動のサクセスストーリー」ではありません。
 
経済的自立が難しい現実、親の庇護下でしか生きられない自分への苛立ち、恋愛で傷つきながらも諦めきれない姿が、飾らずに描かれています。
 
それでも最後に著者がたどり着くのは、「汚くてもいい、カッコ悪くてもいい。それで自分が手に入れたい物を手に入れられるなら」という生の肯定です。
 
統合失調症を「知らない」人にとって、この本は「病気」ではなく「一人の人間の人生」として読める貴重な一冊です。
 
幻聴や妄想が日常にどれだけ入り込み、恋愛や仕事、家族関係を複雑にしていくのか。
 
その中で、それでも人と繋がろうとする姿に、心を揺さぶられるはずです。
 
「ぷっちょ」は深刻さを和らげるための家族の知恵であり、同時に著者が自分を肯定するための小さな抵抗でもあります。
 
この軽やかな呼び名とともに、著者は今日も生きています。
 

逢坂 純著『僕の頭の中のぷっちょPlus 恋愛と家族+幻聴と妄想と』

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