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逢坂 純著障害文学小説『カタルシス』家族が普通に壊れる。痛いほどのカタルシス。

『カタルシス』は、現代日本で起こりうる「家族の崩壊」と「人間の脆さ」を、容赦なく、しかしどこか救いを残して描いた長編小説です。

倒産で全てを失った元社長・梢浩之。愛するが故に離婚を選んだ妻・祥子。
そして思春期真っ只中の娘・みなみ。

そこに元部下の斎藤祐樹と、彼の恋人・香という異質な存在が絡みつき、登場人物全員が互いに傷つけ合いながら、必死に「何か」にすがろうとする――そんな物語です。

本作の最大の魅力は、誰もが「普通に壊れていく」様子を、極めて生々しく、しかし決して下品にならずに描き切っている点にあります。
離婚、借金、孤独、性、依存、嫉妬、裏切り、自暴自棄……。

どれも現代社会のどこかで実際に起こっている、あるいは起こりうる出来事です。

それを「他人事」ではなく「自分のこと」として突きつけられるような感覚が、この作品にはあります。

特に、主人公たちの感情が「行き場を失った」瞬間の描写は圧巻です。
快楽に逃げ込む浩之、家族を想いながらも一瞬踏み外してしまう祥子、憧れと嫉妬の間で自壊していくみなみ、そして斎藤という「破壊と再生の触媒」のような存在。

誰もがどこかで「正しさ」を失い、それでも生きようともがく姿に、読者は否応なく自分を重ねてしまうでしょう。

タイトル『カタルシス』は、読後まさにそれを感じさせる作品です。

読み終えたあと、胸の奥に重い塊が残り、同時に「生きることの重さ」と「それでも繋がろうとする人間の姿」を改めて実感します。
きれいごとやご都合主義は一切なく、だからこそ最後に訪れる微かな光が、痛いほどに眩しい。
「家族ってなんだろう」
「愛ってなんだろう」
「自分が自分でいられなくなったとき、人はどうなるのか」そんな問いを真正面から突きつけられる小説です。
エンタメとして軽く読みたいときには向いていませんが、
「人生の深いところで何かが引っかかっている」
「最近、心がざわついて仕方ない」
そんなときこそ、読む価値のある一冊です。
一度読み始めたら止まらなくなる中毒性があります。
心が揺さぶられる覚悟のある方だけ、どうぞ。

逢坂 純著『カタルシス』

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