『話し相手、聞き上手 統合失調症の僕と、姉との対談集』(逢坂 純・著)は、統合失調症を20年以上抱える当事者と、その姉との日常会話をそのまま収録した、とても率直で温かい対談本です。
LINEや電話でのやり取りをほぼ生のまま載せているので、まるで隣の部屋で兄弟が話しているのを聞いているような感覚になります。
この本の魅力は、「統合失調症って、実際どんな感じなの?」という疑問に、教科書的な説明ではなく、家族の目線でリアルに答えてくれるところです。
例えば「急性期」の章では、
- 病院へ向かう車で突然ドアを開けて飛び降りようとした話
- ヘッドバンキングしながらトランス状態になる様子
- かたつむりに羽が生えた毒々しい絵を描いていたこと
- 家族全員が「犯人かも」と疑った近所での殺人事件との妄想リンク
これらを、姉が「病気だからそういうものだと思って気にならなかった」とサラッと振り返ります。
当事者の視点では「覚えてない」「怖かった」だけですが、家族側から見ると「大変だったけど、病気だから仕方ない」と受け止める日常が伝わってきます。
「煙草」の章では、煙草を吸うたびに「監視されてる」と感じる被害妄想や、「幻聴は本当に誰かの声だ」と信じてしまう病識のなさが語られています。
姉の「聞こえないからTSK(統合失調症の基本症状)だよ」の一言が、辛辣だけど優しくて、家族の距離感が絶妙です。
家では症状を我慢せずに吐き出すのに、外では抑えている「使い分け」の話も、日常の工夫として興味深いです。
「作家」の章では、姉が「統合失調症の経験を土台に書けば、他にないオリジナリティが出せる」とアドバイスしたエピソードがあります。
「統合失調症作家」という肩書きの意味や、社会的認知を広めたい思いが語られ、姉の「いつか名前だけで勝負できるように」というエールが、姉弟の絆を感じさせます。
「家族」の章では、母の口うるささ、父の理解の変化、子供扱いされる葛藤が語られています。
でも「喧嘩しながらも毎日会話がある」「なんだかんだ仲良し」という姉の言葉で、障害があるなしに関わらず、普通の家族のありのままが浮かび上がります。
あとがきで姉が「口が悪いけど、こんな感じの姉弟です」と締め、著者が「頼れる姉に感謝」と返す——この締めくくりが、心を温かくします。
精神疾患に馴染みのない方でも、「家族って、こんな風に支え合ってるんだ」「症状を抱えながらも、普通に笑い合えるんだ」と実感できる一冊です。
重くならず、軽やかに読めて、統合失調症への理解が自然に深まります。
この本は「病気がある家族の、ありのままの日常」を覗かせてくれる、貴重な本です。
ぜひ、手に取ってみてください。
逢坂 純著『話し相手、聞き上手 統合失調症の僕と、姉との対談集』


