家族の絆、病、愛、そして極限の選択――。
この小説は、現代の日本で誰もが抱えうる「普通の不幸」が、どのように人を追い詰め、愛ゆえに壊れていくかを、容赦なく描き出した衝撃作です。
主人公・雄吾は精神障害手帳2級を持つ青年。
統合失調症という病を抱えながらも、恋人・美那子との出会いにより、家族の崩壊を食い止め、穏やかな日常を取り戻そうとします。
母の末期がん発覚、父の宗教依存による巨額借金、そして予期せぬ闇金業者の影……。
一見平凡な一家に、次々と降りかかる試練。
雄吾は愛する人を守るため、いつしか取り返しのつかない罪を犯してしまいます。
物語はサスペンスの体裁を取りながら、根底に流れるのは「愛とは何か」という問いです。
男が殺人を犯した動機は、畏れか、それとも憎しみか? いや、実は最も純粋な「愛」だった――。
その結論に読者は息を飲み、胸を抉られます。
作者自身が統合失調症当事者であるため、病の描写は生々しくリアル。
幻聴や不安の渦中でも、家族の温かさや妻の献身が光るシーンは、読む者の心を強く揺さぶります。
クライマックスでは、愛が本能的な衝動に変わり、法律や倫理を越えてしまう人間の脆さが露わに。
最後まで救いがなく、読後には重い余韻が残りますが、それが逆に強烈な印象を刻みます。
「人は愛するが故に壊れる」――そんな普遍的なテーマを、現代の社会問題(医療費負担、宗教詐欺、闇金、精神疾患のスティグマ)と絡めて描いた点が秀逸です。
約3万文字の短編ながら、密度が高く、ページをめくる手が止まりません。
ミステリー好きはもちろん、人間関係の複雑さや家族の愛憎に興味がある人にも強くおすすめします。
僕のプロフィールを紹介しますと、病を抱えながらも「障害者像に閉じ込められず、エロも恋愛も人生のどうしようもなさも全部抱えて書く」作家です。
そんな僕が書く作品を健常者の方たちにこそ、読んでほしいのです。


