統合失調症を発病し、大学を中退して両親と共に、実家に帰る車の後部座席で僕は、
とても気持ちの悪いエスカルゴの絵を描いていたと後になって家族に聞いた。
「地獄の番犬が吠えている。現実世界から抜け出した男は私を見張っている。それを救えるのは、私のシステマチックな少年だけ」
闘病中に僕が書いた作品は、こんな風な意味の分からない作品ばかりだった。
少し症状が良くなっても、社会人経験の浅い僕には、人を感動させるような作品は書けなかった。
コンクールに何度も応募した。
10年が経ち、結果は出なかった。
通信教育でシナリオを勉強した。
お金が無く、通信教育を続けられない時は、
自分のブログに短編シナリオを掲載して、感想を貰ったりしていた。
その数は300にも上った。
その間に、幾つかのアルバイトをした。
僕は何をやっても、何も出来ないとその時は思った。
しかし、それは統合失調症が原因だったと後で勉強してみて分かった。
闘病中も創作活動は止めなかった。
何の為にシナリオを書いているのか、その答えを幻聴が言った。
「物語のヒーローになったつもりで、現実逃避して脚本を書いてるんじゃないの?」
「色んな職業を書きながら只、自分のやりたい事を捜してるだけなんじゃないの?」
「登場人物を駒のように動かして、ストレス発散してるだけじゃないの?」
そう幻聴は言う。
そうじゃない、そうじゃない、僕は心の中だけでなく、実際に叫んだ。叫んで両親を苛立たせて、苦しめた。
そしてそれは癌になった母をも苦しめ、悲しませる事になった。
逢坂 純著『僕の頭の中のぷっちょ』より。

