統合失調症という精神障がいは、10代後半から20代前半に発症しやすいという事だ。
僕はそう考えると、ドンピシャだった。
大学を留年してから病院に掛かるまでの三年間は毎晩悪夢にうなされ、
少し出掛ければ家に泥棒が入ったような気がして、大学を卒業した友人に電話で助けを求めたりした。
しかし、本当に妄想に苦しめられた時は、
周りが皆、敵のように思えて誰にも助けを求める事が出来なかった。
さて、何故この物語の始まりを母の話から始めたかと言うと、
母の闘病生活が僕に大きな影響を与えたからだ。
母は余命5年を宣告され当時は医師からは嫌われていた免疫療法を、
ありとあらゆる限り勉強して試してみた。
生きる為に自分で自分の癌の事を調べて、
丸山ワクチンが癌にいいと知れば、新幹線に乗って、東京の病院まで通うようになった。
まさに生きる為の努力であり、執念であった。
その効果覿面で、母は背中が痛いとか血圧が高いとか言いながらも、現在も元気で生きている。
僕は、統合失調症と診断されてから、10年は自分の病気に抵抗するだけだった。
自分の病気を知ろうともしなかった。
その余裕が無かった。
「敵を知り、己を知る」。
中国の兵法書の中にある格言だ。
敵の情勢を知らなければ、何度闘っても、破れてしまう、
母は敵を知り己を知って、それを実践して、病気に打ち勝ったのだ。
僕も初めの十年は、足掻いて滑って、寝転んでの連続だったのだが、
母の癌と、ある出会いがきっかけで、自分の病気の事を学び始める事になった。
逢坂 純著『僕の頭の中のぷっちょ』より。

