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⑭僕の頭の中のぷっちょ。

幻聴の事を「ぷっちょ」と言う事にしている。

幻聴、と言うより、ぷっちょの方がまろやかでほんわりするような気がするからだ。

どういう時に使うかと言うと、

「今、ぷっちょがバーカって言った」とか「あんたのそれ、ぷっちょだから」とか。

姉が名付けてくれたぷっちょのお陰で、大分、痛みが半減した。

他にも妄想の事は、「くっちゃん」と呼ぶようにしていたのだが、こちらは定着しなかった。

家に始終いる母親とは、統合失調症の基本的症状の幻聴、妄想の事で、

母親に依存して助けを求めたが、結局最後はいつも喧嘩になった。

しかし、家を出て結婚した姉とは、丁度いい距離感が生まれ、

僕の事を離れたところから冷静に分析し、僕の病状を和らげてくれたような気がする。

姉曰く、もし僕と姉が一緒に同居していたならば、

こんな風に僕との今の関係はなかっただろうと言った。

姉とは、ここ数年の間で、大分話をする機会が増えた。

姉は農業研修を経て農業をやっていたのだが、腰を痛めて、農業を辞めた。

姉は結婚していたが、農業を辞めてから自分の自由な時間が増えた。

だから僕は姉が仕事が早く終わった時や、休みの日などには、

電話やビデオ電話を使って、何かしら話をした。

これも恋人同士がする事の一つのように思えたが、

統合失調症を患っている僕には、他人が介入する事は考えられなかった。

他人に迷惑は掛けられないと思っていた。

僕の恋愛経験が乏しい僕だから、

そう思わせているだけなのだろうか。実際の所は自分でも分からない。

姉との電話の内容は、統合失調症の事か創作の話が主な話題になったのだが、

僕が幻聴の話をすると、「それ、ぷっちょだから」と姉は僕にその都度、言ってくれた。

僕は幻聴や妄想を実際の事と迷う事が多々あった。

それを姉はぷっちょという言葉で一刀両断してくれた。

姉には本当に感謝している。

今でこそ、病気の症状を客観的に書けているが、

統合失調症の真っ只中の頃はそんな余裕は少しも無かった。

逢坂 純『僕の頭の中のぷっちょ』より。

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