作業所の職員さんが、僕が習作作品を書いているという事に関心を持ってくれました。
僕が習作を書く事で自分の事を見つめ直すキッカケになっていると、職員さんに言うと、
私も何か書こうかなと、言っておられました。
職員さんはこんな事を言いました。
「だけど、私に何が書けるだろう」と。
僕はその職員さんに言いました。
うちの母親も料理日記を毎日、書いていると。
その日の晩御飯のメニューを書いて、そしてその日あった印象に残った事を
二,三行の日記として書いていると。
僕は尚も言いました。
僕は統合失調症の世界観で習作を書いているけど、
僕は職員さんに、作業所で働いている自分をテーマにして書いたらいいじゃないかと言いました。
文章を書くという事は、色々と学ぶことが同時に出来ると思います。
『僕にしか書けない小説』
雄太郎は、佐枝に言った。
「よく何年もネタ切れせずに書けるな」と。
そこは、佐枝の書斎だった。
佐枝は、プロの小説家だった。
雄太郎は、大学の時の文学研究会の仲間だった。
「俺ももう一回、書き始めるかな」
雄太郎が言った。
「書けばいいじゃん。応援するよ」
佐枝は雄太郎にそう声を掛けた。
「でも、書くと言っても、お前みたいにネタが無いからなー」
「あるじゃないかよ、沢山」
佐枝はタイピングの手を止め、そう言った。
「何が~、ネタなんて俺には無いよ」
「お前には、沙友里ちゃんがいるだろ?」
「沙友里をネタにするって事か?」
「そうだよ、最高のネタじゃないか」
「あの鬼嫁に知られたら、ただじゃすまないよ」
「お前ら、何ねん越しの末の結婚だよ」
「あー、あの若かりし日々が懐かしい」
「お前ら、メチャメチャ恋愛結婚だもんな」
雄太郎は、少しだけニヤリとしながら言った。
「まぁ、その通りだけどさ」
「だったら書けるだろ?」
「書けるかなー、俺に」
「お前にしか、書けないよ、あの沙友里ちゃんの本性は」
「そうだよなー、あいつ外面だけはいいからな」
佐枝は再び、ディスプレイに顔を向かい、小説の続きを書き始めた。
「そうか・・俺にも書ける、か」

