僕は以前は、このまま一人で何も成し遂げられずに、死んでいくのかと考えると、とても不安になっていったし、心が急に寂しくなった事がありました。
僕は企業のコンペの脚本賞で、優秀賞を頂いた事があるのですが、その時、嬉しくて大学の同級生みんなに、電話を掛けまくった事がありました。
初め、皆喜んでくれたのですが、同級生達には新しい家族がいる者もいれば、仕事にやりがいを見つけている人もいました。
その時僕は、寂しい気持ちで一杯になって、電話を切った覚えがあります。
その事を僕と同い年で未婚の学生時代の友人に相談した事がありました。一見キャリア志向で仕事にやりがいを持って寂しさなど感じないだろうという彼女に、言われた言葉がこれです。
「私も寂しい時あるよ。寂しい時は寂しいままでいいと思うよ」
幸せの形というのは、人それぞれ、自分は自分、人は人という言葉をしっくりと噛み締めました。
『寂しい時に孤独にならない方法』
僕の心に、今突風が吹き抜けた。
それは、僕の来ているコートの裾を吹き飛ばす勢いで吹き上げた。
冬目前の北風は、思いの他寒さを感じさせる。
僕は今さっき迄、一人で酒を飲んでいた。
コロナの規制が緩んだ為、外で酒でも飲もうと出かけていた。
1人で酒を飲むのなら、何も外でわざわざ飲まなくてのいいものをと思う誰かもいるだろう。
だけれど、僕は財布をズボンの後ろポケットに入れて、家のドアを開ける事を選んだ。
部屋にばかり閉じ籠っていないで、外に出る事を選択したのだ。
大衆食堂の夜の営業している店に入った。
カウンターに座った。
だけれど、人と人が隣同士に座って酒を飲んでいても、心と心がすれ違う事は無い。
実家の田舎のこんな店だったら、知らない者同士、笑い合えただろうか。
賑わった店内には、新聞を観る者、店のテレビをジッと観ている者、日本酒と一緒にスジの煮込みを食べている者、様々だった。
そんな中にいると、僕は自然と寂しさを遠くに解放していけた。
それが今の僕の正解だ。

