僕は自分の悪口を言われているような幻聴を聴き、
それを真実の事だと思ってしまう時があるのですが、
うちの姉も母もそういう時、同じ事を言います。
それは「あんたの事なんか、だっれもッ、1ミリも考えてないわ」という言葉です。
確かに冷静に考えると、皆、自分の生活を送る事で、精一杯なのかも知れません。
僕は統合失調症になって、自分の事を誰かが何かを思っているというよりも、
誰も僕の事なんか気にしてる人などいないと思った方が、
気が楽です。
「割合、自分の事で精一杯」
僕と彼女は付き合い始めてから3年が経つ。
付き合ってはいるが、中々会えない。お互いに自分の仕事には、大満足ではないけれど、やりがいをもって仕事に臨んでいる。
彼女の勤め先はコンビニエンスストア。レジはセルフレジではあるが、彼女に課せられた仕事は、まだ山ほどあると彼女は言う。
僕はパチンコ台を作るライン工場。
僕はパチンコなど一切やらないし、ケバケバしい赤とオレンジ色の機体を見ると、げんなりしてしまう。
彼女と僕は、お互い深夜に働く。
彼女は売り物の食品の品出しをやる時に、賞味期限が先の商品を前に出すのだが、それが美味しそうに見えるように、ライトの当たりやすいように、商品のライトの当たり方を工夫する。
僕は僕で、この仕事に思い入れも無くやっているのだが、流れてくるパチンコ台にバネを一組入れる時に、一つ幾らと頭にそのバネ一つを入れる事で入る給料の事を思い浮かべる。
朝、五時。
仕事を終えて、外に出ると、まだ月が薄っすらと浮かんでいるのが見える。
彼女の仕事の終わる時間は僕の就業時間と一緒だ。
彼女も今、一緒の月を見ているのだろうか。
その時、彼女はそのまん丸の月に、僕の顔を思い浮かべていた。
彼女が愛しい。

