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バッティングセンターの夜。

僕の通う作業所には、毎年ソフトボール大会がありました。

今はコロナ禍で、中止になっていましたが、

それまでは、毎年ありました。

僕は小さい頃から球技が苦手だったので、そのソフトボール大会には不参加でした。

僕はボールを投げる事さえ、不得意だったから。

僕にもうちょっと勇気があったなら、バッティングセンターに毎晩通って、練習していたでしょう。

だけども、僕にはその勇気が無かったのです。

それを勇気と呼ぶのかどうかは分かりませんが。

僕にとっては、その行為は勇気を伴った行動だったのです。

僕はインドア派と言えば格好がつくけれど、只の運動音痴なのです。

『バッティングセンターの夜』

田上はバッティングセンターのバッティングボックスの中にいた。

バットを構えるその姿は、結構サマになっている。

田上は、バッティングセンターで、白球を打っている時、その時だけ無心になれる。

バッティングマシーンから投げられるそのボールは、130キロの速さで田上に向かってくる。

初めてここへ来た時は、打てなかった。

あれは、会社のソフトボール大会の一週間前から、バッティングセンターに缶詰になった時だった。

田上は運動が出来ない運動音痴だった。

野球の球さえ放れなかった。

だから、バッティングだけでも、打てる男になりたかった。

もうこのボックスに入ってから、2時間は経つ。

25球、300円。

一球当たり、12円。

田上のソフトボール大会で打つという信念に、適った値段だろうか。

それはバッティングマシーンから投げられる球を田上がどれだけ打ち返しているかが問われる所だ。

田上は大会でヒーローになりたかった。

田上は守備に自信が無かった。

だからせめて攻撃の方だけでも。

田上の夜はまだ長い。

僕は思い描いたが僕になれているだろうか。

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