僕は今ほど買ったビールをナップサックに仕舞い、ハマーのマウンテンでペダルを踏み込んだ。僕の愛車ハマーはアスファルトを飛び跳ね、走り出した。前後輪に装着されているサスペンションが元気よくしなった。
僕が今から向かう先は、優作のアパート。
優作と週に一度の、映画鑑賞の土曜日だった。
この映画鑑賞の約束は、僕と奴が別々の道を歩み始めてからも、変わらず続いていた。
僕は高校時代の映像研のお陰で、ロボット工学に興味を持ち、その研究をする為に、地元の技科大を受験して見事にスベった。
優作は映像研のお陰で、映画を自分の手で作ろうと思い、映像専門学校に通おうとし、両親にその旨を告げたが、学校のお金は自分で出すようにと言われて、一年間学校のお金を貯める為に映画館でのアルバイトをする事になった。
僕は予備校に通う日々を送り、優作はアルバイトに勤しみ、そして毎週土曜日には、二人で集まって一人暮らしを始めた優作のアパートの部屋で、映画を観た。
優作のアパートには、ベッドと冷房と冷蔵庫が備え付けられているワンルームマンションだった。
部屋には、テレビが一台、しかも32型のフルハイビジョンテレビが備え付けられていた。
そのハイビジョンで毎週、優作と僕は映画を観るのだ。
僕は優作のアパートへと急いでいた。
途中の赤信号でマウンテンバイクを止めた時、
首に掛けた防水ホルダーのスマホに着信があるのに気が付いて、スマホを手に取って見た。
「今日は中止。絶対来るな!」
LINEのメッセージにはそう書かれてあった。時間は2時間前だ。
「今さら何だよ~」
頭を抱えたところで青信号になった。
2時間前になって理由も無くドタキャン?そんなのあるかよ!、そう思い、僕は奴の家に何が何でも行ってやろうと思った。
僕はLINEのメッセージも無視して、ペダルを踏み込んだ。

