『空耳』、それは自分の中の経験だったり、知識の量だったりで自分の中から生まれる耳で聴こえる幻聴なんじゃないかと思っています。
僕は頭の中で聴こえる幻聴もあるのですが、耳から聞こえる幻聴というのもあります。
もしかしたら、あの人達の喋っている声は僕の噂話をしているのだろうか、と。
こういう幻聴は、妄想を生み、増々病気を悪化させる。健常者の人でもそういうのあり得るでしょうか?と疑問に思いました。ありそうな気もするのですが、それを母に聞いたら、「そういう風に考える事自体、ご病気でーす!」と言われてしまいました。
疑心暗鬼は病気なのだろか?確かに病んでるように思えますが、ちょっと少し違うような気もします・・・。
『疑心暗鬼、それは空耳にも似ている』
寝室の戸棚の引き出しの中に、探偵事務所の名刺があった。
妻の物だろうか?
だとしたら、何を調べる為に、こんな探偵なんて雇おうとしているのだろう。
いや、もう妻は探偵を雇っているのかも知れない。
俺の事を調べているのか?
だとしたら、俺の何を調べているのか。
妻に対してやましい事など、何一つ無いという自負は常にある。
妻と結婚してから、5年、俺はずっと変わらず妻に愛情を注いできた。
この探偵事務所の住所、県外じゃないか。
どういう事だろう。
そこまで、用心深くなって探偵を雇おうとしているという事か?
探偵を雇う為には、それなりの大金が要る筈だ。妻はそれをどうして工面しようと思っているのだろう。
「ただいまー」
妻の声が玄関から聞こえる。
俺は寝室を出て、何喰わぬ顔で、妻の帰宅を出迎えた。
俺は寝室の戸棚の引き出しに入っている名刺を、持ち出してきてしまった。
「どうしたの?」
妻は笑顔で俺に問うた。
妻は何を調べようとしているのだろう。
目の前の妻の普段の言動からは、それが何なのか、全く見当が付かない。
妻に直接、聞いてみようか。
俺は、俺の手の中にある名刺を握り潰した。
そんな事をしたら、妻にこの名刺を俺が見た事が分かってしまうじゃないか。
知りたい、妻の秘密を。何故、そんな笑顔でいられるんだ。

