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僕はひとの不幸が、すきゾ!

油科さんは泣いていた。僕はそれを黙って見つめていた。油科さんのお兄さんは、油科さんを責める事なく、僕と同じように、油科さんの泣き顔を見ていた。

「どうして、そんな嘘をついたんだ」

油科さんのお兄さんが言った。

油科さんは只泣くばかりで、お兄さんの問いには答えなかった。

「今日は帰ってくれないか?」

お兄さんは僕に言った。はい、と答えて、僕は油科さんのアパートを出ようとした。

「気持ちが無いなんて、辛いじゃない」

油科さんは僕の背中に向かって、ポソリと小さく呟いた。

「分かったもの。私が好きであんな事したんじゃないって。だから、……仕返ししたかったの」

油科さんはそう言って、シクシクとまた泣い

た。

「帰ってくれないか?」

油科さんのお兄さんは、僕に帰るように促した。

「もう妹とは、二度と会わないでください」

僕は優作のアパートに戻る事にした。油科さんの家からの自転車での帰り道は、皮肉にも足取りは軽かった。よくよく考えれば、あそこでカミングアウトしていて、良かったと思えた。だって、僕は、統合失調症で、今は只の無職の男だし、統合失調症を抱えての結婚なんて、絶対に無理だ。油科さんのお兄さんは僕に、油科さんへの責任を迫ったが、僕にはその責任を背負える要素なんて一つも無かった。精神的にも、経済的にも絶対に無理だ。ネガティブな将来しか見えて来ない。

優作はそんな僕をどう思うだろう。僕を責任感の無い男だと、責めるだろうか?それとも、油科さんが妊娠してなくて、良かったなと、喜ぶだろうか。そんな事を僕が考えているのを知ったら、古賀さんはもう一発、僕の腹に蹴りを入れるのだろうか。

そんな事を考えながら、僕は優作のアパートに到着した。

僕は優作の家のドアチャイムを鳴らした。

ドアが開くと、いつもよりシュンとした表情の優作が顔を出した。

古賀さんはもういなかった。自分の家に帰ったのだろう。優作は僕のとばっちりを受けて、古賀さんに何か言われたのだろうか。表情が冴えなかった。

僕は優作に先程起こった油科さんとの話を、優作に報告した。

「まあ、結果としては良かったじゃないか」

優作は僕が油科さんにした事を知らない。

僕が油科さんをどう思っているのかを知らない。

「妊娠したなんて、嘘吐く女とは、付き合わないで良かったじゃないか」

優作は僕に言った。

「古賀さんは帰ったの?」

僕は優作に聞いた。あれから優作と古賀さんとの間でどんな話があったのかが気になった。

「もしかしたら、朝子さんと別れるかも知れない」

「え?!」

女なんて、自分勝手な生き物だ、僕は自分に対しての侮蔑だの、反省だのを忘れて、古賀さんと油科さんの事など忘れるに限ると、優作に言った。

「全部、お前のせいだからな!」

優作は、憤っていた。

だが、僕は自分に起こった災難を逃れた事を、一人喜んでいた。

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