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僕は一人が、すきゾ!

優作はココアを煎れて、僕の手にそれを渡した。ココアの温かさが掌から全身に広がった。そして一口ココアを飲んだ。そしたら、その甘さで僕の心も少しだけ温まった。そのココアは甘さ控えめで、真っ当な人間の飲み物のような気がした。優作は真っ当な男なのだなと、その時思った。

「何しに来たんだ?まあいいや」

優作は僕の隣で胡坐を掻いて座った。

「そう言えば、今日は油科さんとデートだったんじゃなかったのか?楽しかったか?」

優作は、僕がやっと女の子に関心を持つ事を喜んでいた。

「うん、まあ……」

「あんまり楽しそうじゃないな」

「いや、そんな事無いよ」

僕は小さく呟いた。

古賀さんとうまくやっている優作の事が僕を少し卑しい気持ちにさせた。

まあいいやと優作は言い、そして今日の油科さんとのデートの事も古賀さんに報告しておくと言った。

優作とこの部屋でずっと映画を観ていたかった。ずっとそうしてあの時と同じように、高校時代と同じように遊んでいたかった。悲しい気持ちになった。

そんな気持ちでいる事など、優作は微塵も感じず、「これ飲んだら、帰れよ」と言った。

「今から古賀さんが来るんだ」

みんな、うまい事やってるんだな。惨めなのは、僕だけだ。

「それじゃあ、僕はもう帰るよ」僕は立ち上がって言った。

「悪いな」優作の頭は古賀さんで一杯なんだろうな、優作はもう学生時代のように、僕だけの事を考えてくれる事も無いんだな、そう思った。

僕は「じゃあな」と言って、ドアを開けて、優作にさよならをした。

何故か優作に対して後ろめたい気持ちだった。こんな筈じゃなかったのに、こんな筈じゃなかったのに。

ドアを出て、アパートの自転車置き場で自分の自転車のチェーンロックを外していると、後ろから女性の声がした。

「武田さん」

それは古賀さんだった。

「今日、油科さんとデートじゃなかったの?」

彼女の呼びかけを無視して、僕はサドルに座り、マウンテンバイクを走らせた。

「武田さん……」

僕は当てもなく自転車を走らせた。

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