彼女に毎日のサプライズをあげよう。ほんの些細なものでいい。朝起きて、すこしだけ笑って貰えればそれでいい。夜寝る前にすこしだけ穏やかな気持ちになってくれたらそれで僕は天まで上る気持ちになれる。僕は彼女の事をあまりよく知らない。それは僕が彼女と話し合わないからだ。彼女は毎朝、おはようと声を掛けてくれる。僕は寝ぼけた頭でおはようとだけ返事をする。彼女は今日は一日晴れるね、と言う。僕は窓のブラインドを少し上げて、外の天気を伺う。
きょうも暑くなりそうな青空だった。
夏はもうそこまで来ている。
夏の前哨戦の梅雨はそう、その坂を登るところまで来ている。僕は待ち人を待っている。
その待ち人が僕が今から会う人だと言うのに、
顔さえ知らない。ちゃんと待ち合わせが出来るだろうか。待ち人は古くからの友人だった。
僕は珍しい花屋で買ったブリザーブドフラワーを手に持って、ゴドーのように、大きな大樹の前で待ち人を待つ。
夏の陽ざしから逃れるように、僕はその緑が多く生い茂った大樹の下で待ち人を待つ。
それは彼だろうか、もしくは彼女だろうか。
僕は今から会う待ち人の事を何も知らない。
彼は何が好きなんだろう。彼女はどんなものを好んで食べるのだろう。何やら思いにふけっていたら、向こうから歩いて来る人影が見えた。
多分、僕の待っていた人がやっと来てくれたようだ。
「やあ、初めまして」
僕はそう言って大樹から太陽の下へ、駆け出していった。

