ジャッ、ジャッ、ジャジャッ。僕は芯の歪んだ赤色鉛筆を尚、工作用のナイフで削っていた。赤色鉛筆の先は鋭く尖るどころか、平べったく長方形の形に削られていった。
だけども、僕は鉛筆削り機を使わなかった。
太古の人間の英知の結集したものが、このナイフで鉛筆を削るという動作に、籠っているのだと感じていた。
削られた鉛筆のカスは、おがくずに赤いペンキが付いたようになって、床に敷いた新聞紙の上に落ちていった。
新聞紙を下に敷くようになったのは、自分の部屋が鉛筆を削って出来たカスのような物で、
埋め尽くされないようにちゃんと容易にゴミ箱に捨てられるようにとの考えだ。
その前は部屋に散乱する喘息の原因になるような埃だらけの部屋だった。
アレルギーを起こしそうなその床のごみごみした物は、唯一僕をこの部屋から出ようとさせるキッカケとなった。
それでも、僕が季節外れのチョコミントアイスをコンビニに買いに出掛けている間に、母はここぞとばかりに、旧型の掃除機を部屋に持ち込んで、僕の部屋を掃除した。
旧型の掃除機は、ズィーーンと耳障りな大きな音を立てていた。
僕がコンビニから戻ってくるまでの13分間を母は必至で掃除機を掛けた。
ドアを入った僕の耳に何か音が聞こえた。
何かを吸引する音だ。
その音は、僕の部屋の方から聴こえていた。
部屋のドアを開けた。
が、そこには誰も居なかった。
只、音を立てるのなら、部屋がパタリと綺麗に掃除されていた。
母親の仕業だとすぐに分かった。
それでも僕は母のその行為に対して、
声を荒げるでもなく、静かにドアを閉めた。
僕は頭を抱えて、叫んだ。
削った赤鉛筆を二つにボキリと折った。
後から考えると、それがその赤鉛筆の寿命だと思った。

