僕の体は借り物だから、僕にはまん丸な円を描けない。
円はコロコロ転がって、人と人とを結びつける。
だけれども、僕の体は借り物だから、
円は僕の体を通り抜けて過ぎていき、僕はその円に収まれない。
僕の本物の体はどこにあるかと言うと、
この世界と繋がっているが、とても遠い所にある、僕とは接点があるようで無い場所。
その場所から、僕の様子を監視するように、街を歩く僕の後を、彼らは着いて来る。
僕はその足音に恐怖を感じ、身構える。
しかし、それは無力な僕が幾ら身構えようとも、彼らは僕を何処かから監視する。
丁度、タイミングが合えば、僕も彼らを判別出来れば、
僕は彼らと目を合わせる事が出来る。
彼らは僕の描いた円には入れない。僕も彼らの描いた円に入れない。
僕は僕が描く円に人を求め、彼らは彼らの描いた円に繋がりを求める。
どちらも似たり寄ったりだけども、二つの円は似て否なるもの。
僕はしばらく円を描くのを止め、彼らの描く円からも目を背ける。
旅から帰還した男は、再び円に入ろうとするが、
僕は男の作った円にも、近づけないで、恐怖と共に目を覚ます。
円を作り続けなくてはいけない恐怖。
それはルーズソックスの流行った女子高生に似ている。
僕は明日からまた太陽が昇る前に起き、月が天まで上り切る前に眠る。
その頃には、また円を上手に描けるのかな?
不格好な僕の描く円は、とてもいびつだけれども、僕にはお似合いの不格好な円だ。
その円を愛おしむかのように、僕は男の背中に円を描きたくなる。
だけれども、それはもう叶わぬ事なのかも知れない。
僕は男とは違う方向に歩いて行っているから。
良かった……、僕とはむしろ接点の無い世界の扉はまだ閉じてはいない。

