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気まずい二人。

彼女と顔を合わせたら、なんて挨拶しよう、僕はベッドの上で、壁をボンヤリ見つめていた。

彼と顔を合わせたら、いつものようにおはようと言えるだろうか?彼女はそう思った。

壁一枚の隣同士の部屋、以前は彼の広い部屋のキングサイズのベッドで二人は寝起きしていた。

壁一枚隔てているだけで、気持ちを穏やかに保てる。だけど、それは束の間の休息でしかない。二人の心にあるのは、不安だけだった。

彼女はリビングのテーブルの上に置いた離婚届の用紙を彼はどう思うのかと不安だった。

彼を嫌いになった訳じゃない。だけど、彼女は許されない間違いを冒してしまったのだ。

彼はそれを許してはくれないだろう。私は彼以外の男に心も体も許してしまったから。

一度きりにする筈だった。けれど、あの人の長い指先や涼やかな吐息に触れる度、彼女の心は、行ったり来たり。彼とあの人の間を行ったり来たりだ。

初めは好奇心だけだった。その筈が、あの人と会う度に彼と一緒に食事をしている時も、ベッドで愛し合っている時も、あの人の顔が思い浮かんでしまう。

駄目、駄目だ。こんな事。

彼女はベッドから飛び起き、ドアを開け放ち、

リビングのテーブルの上の離婚届を引き裂いた。

そして彼女はキッチンで彼がリビングに置き忘れたジッポで離婚届の用紙に火を点けようとした。

ジッポはオイル切れらしく中々火が付かなかった。

と、リビングのドアが開いた。

彼だった。

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